読者に憐れみを ヴォネガットが教える「書くことについて」

¥3,520

【書籍情報】
読者に憐れみを ヴォネガットが教える「書くことについて」
カート・ヴォネガット&スザンヌ・マッコーネル=著|金原瑞人・石田文子=訳

発売日:2022年6月25日
四六判・上製|616頁(仮)|本体:3,200+税|ISBN 978-4-8459-2003-7


【内容】
『スローターハウス5』『タイタンの妖女』などで知られる戦後アメリカを代表する作家、
カート・ヴォネガットの「書くこと」と「人生について」。

辛辣で、機知に富み、心優しきニヒリスト、ヒューマニストで、教師としては熱血漢。
「書くことは魂を育むこと」を生涯の信条としたヴォネガットの教えを、彼自身の言葉と小説の引用、そして周囲の人々の談話からまとめた、「ヴォネガット流・創作指南+回顧録的文章読本」。

生誕100年を記念し、待望の邦訳!


カート・ヴォネガットは、口癖のようによくこう言っていた。
「芸術活動にたずさわることは、魂を育む方法のひとつだ」。
そう言ったあと、ヴォネガットは顔をしわくちゃにして唇をぎゅっと引き結んでいた。それは彼がこの考えをひじょうに重要だと信じていたからだ。
『読者に憐れみを』はヴォネガットのそんな考えを具体的に表し、書くことと人生について、そしてそのふたつがなぜつながっているのかを明らかにした、何かを書こうとしているすべての人への珠玉のアドバイスである。

本書では、ヴォネガットがどのようにして作家になったのか、なぜ作家になることが彼にとって重要だったのか、そしてそれがなぜ本書の読者にとっても重要なのかが、ヴォネガット自身の言葉と実際の作品の引用から、彼の教え子であったマッコーネルによって丁寧に分析され、余すところなく説明される。
作家としての苦闘や、戦争体験や母親の死など、彼の人生に生涯つきまとった「影」についても言及しながら、戦後の時代精神を体現するベストセラー作家となった成功の秘訣のほか、「つねに学び、それをつねに教えていた」という教師としての素顔も明らかにされていく。

さらに、文章を書いたり物語を書く際に必要な、原動力、才能、想像力の飛躍、勤勉さ、反省、ブラックジョークについて、生計を立てること、心身のケア、はたまたコミュニティの重要さにいたるまで、さまざまな角度からユーモアを交えながら真摯に語られる。加えて、物語はどこから生まれるのか、冒頭部の書き方、プロット、登場人物の書き方、耳で聞く文章と目で見る文章の違い、見直しと校閲などのコツとテクニックについても惜しげもなく披露される。
その驚くほど実践的なアドバイスは、作家志望者のみならず、文章を書く時に悩んだことのある人、何かの課題と格闘して自分は無能だと感じているすべての人の心に突き刺さるだろう。
ヴォネガットの手稿や実際の原稿、メモ書きや、出版社からの手紙なども多数収録した、ヴォネガットファン必見の一冊となっている。

ちょっと風変わりで、だけど読むと書き続ける勇気が湧いてくる、
カート・ヴォネガットの教えを一冊にまとめた、創作指南+回顧録の決定版。

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猫背のカート・ヴォネガットは、居心地の悪い薄暗い教室で、我々十二人の学生に対して、魅力的なかすれた声で、開口一番にこういった。「長編小説は死んだ。いまどき小説など誰も読まない。アメリカはみずからの想像力を失った。もう終わりだ」
[……]ヴォネガットの長口舌が終わったあと、学生のひとりが蚊の鳴くような声でおずおずとこう質問した。
「ということは、先生は、そのぉ、僕たちは小説を書くとか、そういうことはよしたほうがいいとおっしゃってるんですか?」
 これに対して、ヴォネガット先生は(もちろん、タバコの火をもみ消しながら)、椅子の上で心持ち背筋を伸ばし、心持ち目に輝きを取り戻して、こういった。
「いやいや、違う。誤解してもらっちゃ困る。きみたちは小説家として生計を立てることはないだろう。いくらがんばっても無理だ。しかし、だからといって、書いてはいけないということではない。きみたちはダンスのレッスンを受けるのと同じ理由で小説を書かかねばならない。高級レストランでのフォークの使い方を学ぶのと同じ理由で書かねばならない。世界を見る必要があるのと同じ理由で書かねばならない。それはたしなみだ」
──本文「第9章 魂の成長」より


「ヴォネガットの講座での課題をいま振り返ってみると、文章を書く技術より、もっと大事なことを教えるためのものだったとわかる。それは私たち学生に、自分で考えさせたり、自分はどんな人間かを理解させたりするものだった。自分は何が好きで、何が嫌いで、どんなことで感情が爆発するのか、どんなことでときめくのかを自覚させるためのものだった。
 私はこの本に収めたヴォネガットの言葉によって、読者にも同じようなことを理解してもらいたいと願っている」
──マッコーネルによる「はじめに」より
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【目次(仮)】
はじめに
第1章 何かを書こうとしているすべての人へのアドバイス
第2章 小説を書くことについて
第3章 原動力
第4章 回り道をしながら前進
第5章 まっしぐらに前進
第6章 突破
第7章 価値あるテーマを見つけることへの不安、死の欠乏
第8章 原動力の切り札、すなわち恐れないこと
第9章 魂の成長
第10章 避難所
第11章 偉大な芸術をつくるもの、すなわち芸術と魂
第12章 変化の触媒
第13章 教師、すなわちもっとも気高い職業としての作家
第14章 教室のヴォネガット
第15章 重みと感触
第16章 才能
第17章 勤勉さ
第18章 落とし穴
第19章 方法論主義
第20章 実体化
第21章 増殖
第22章 再生
第23章 真珠の中の真珠
第24章 冒頭部
第25章 プロット
第26章 登場人物
第27章 耳で聞く散文
第28章 目で見る散文
第29章 ジョーク好き
第30章 ブラックユーモア
第31章 もっといい話になるように──見直しと校閲
第32章 どれにしようかな、すなわち選択
第33章 生計を立てること
第34章 心身のケアをすること
第35章 人生と芸術で遊びほうけること
第36章 愛、結婚、そしてベビーカー
第37章 いっしょのほうがいい、すなわちコミュニティ


【著者プロフィール】
カート・ヴォネガット(Kurt Vonnegut)
1922年インディアナ州インディアナポリス生まれ。2007年没。現代アメリカ文学を代表する作家。14の長編小説のほか、講演集、エッセイ集、書簡集、戯曲などさまざまな作品がある。代表作に『プレイヤー・ピアノ』『タイタンの妖女』『母なる夜』『猫のゆりかご』『スローターハウス5』『チャンピオンたちの朝食』ほか多数。アイオワ大学創作科での教師時代には、ジョン・アーヴィングらも指導した。
ヴォネガットの小説は、想像力が生きる力となることを示し、今なお新たな世代に影響を及ぼし続けている。ヴォネガット生誕100年を迎え、新たなヴォネガット像を鮮やかに伝える本書が彼の教え子の手で書かれたことは、世界中の読者にとって思いがけない幸運といえるだろう。

スザンヌ・マッコーネル(Suzanne McConnell)
作家、編集者、文芸創作の教師。1965年から67年まで、アイオワ大学文芸創作講座でカート・ヴォネガットに教えを受けた(ヴォネガットは『スローターハウス5』を執筆中の時期だった)。ヴォネガットとマッコーネルは友人となり、その友情はヴォネガットが亡くなるまで続いた。マッコーネルはヴォネガットに関する短い回想録を『ブルックリン・レイル』と『ライターズ・ダイジェスト』の二誌に発表している。2014年には、作家および文芸創作教育協会(AWP)主催の「ヴォネガットのレガシー:戦争その他の人間の存在を脅かす災難について書くこと」という討論会でパネリストを務めた。また、ハンター・カレッジで30年間文芸創作の教師を務め、『ベルヴュー・リテラリー・レヴュー』誌で小説部門の編集者を務めている。彼女の小説はプッシュカート賞に二度ノミネートされ、『ニュー・オハイオ・レヴュー』誌の2015年度小説コンテストで最優秀賞、『プライム・ナンバー・マガジン』誌の2014年度超短編小説部門で最優秀賞、『ソー・トゥー・スピーク』誌の2008年度小説コンテストで次席賞を受賞している。

【訳者プロフィール】
金原瑞人(かねはら・みずひと)
1954年岡山市生まれ。法政大学教授・翻訳家。児童書、ヤングアダルト小説、一般書、ノンフィクションなど600点近くの翻訳を手がける。訳書にヴォネガット『国のない男』、シールズ『人生なんて、そんなものさ カート・ヴォネガットの生涯』、マコックラン『不思議を売る男』、シアラー『青空のむこう』、グリーン『さよならを待つふたりのために』、モーム『月と六ペンス』、クールマン『リンドバーグ 空飛ぶネズミの大冒険』、サリンジャー『このサンドイッチ、マヨネーズ忘れてる ハプワース16、1924年』など。エッセイ集に『サリンジャーにマティーニを教わった』、日本の古典の翻案に『雨月物語』『仮名手本忠臣蔵』など。HPはhttp://www.kanehara.jp/

石田文子(いしだ・ふみこ)
1961年大阪府生まれ。大阪大学人間科学部卒業。金原氏に師事して翻訳関係の仕事にたずさわる。訳書にドイル『シャーロック・ホームズの冒険』『名探偵シャーロック・ホームズ』、アーバイン『小説タンタンの冒険』、シアラー『スノー・ドーム』、ハプティー『オットーと空飛ぶふたご』、ローズ『ティモレオン』(共訳)、アームストロング『カナリーズソング』(共訳)、カリー『天才たちの日課』『天才たちの日課 女性編』(共訳)、バーサド&エルダキン『文学効能事典』(共訳)などがある。京都府在住。

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